「道徳を守ることは正しいことである」と広く考えられており、「なぜ殺人はいけないのか」というように道徳に対して疑問を示すこと自体が不道徳的であると嫌悪されることもある。我々は直接自分に関係がない場合であっても他人の行動を気に掛け、道徳と規範に従っているかに注視する。道徳に反する行為は通常、本人に罪悪感を、それを目撃した第三者には嫌悪感や怒り、報復など強い感情的反応を引き起こす。また慣習的規範よりも、通文化的な道徳的規範の方が憤りは激しい。さらに違反者に対して寛容な態度を取る者へも同様の憤りを引き起こす。
人は非道徳的な行為の犠牲者になったり、それを目撃した場合に、一般的にその行為者を処罰したいという強い願望を持つ。マナーやエチケット、慣習的規範への違反は軽率で粗野だと見なされるだけであるが、道徳的規範への違反は処罰の欲求を呼び起こす。政治学者フィリップ・テトロックによれば、規範への違反を目撃し、違反者が罰を逃れていると考えるとき、人は違反者への加害を抑制する道徳心の閾値を切り下げるようである。そして厳しい処罰を要求し、違反とは関連のないことにまで判断が影響する。例えば違反者の曖昧な態度をより敵対的と見なすようになり、不可抗力の要因の役割を割り引いてみるようになる[8]。
マーク・ハウザーとファレイ・カシュマンはトロッコ問題などを利用し、どのような原理が道徳判断(特に危害に関する)に影響を与えるのかを調査した[9][10]。彼らによれば、
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行動の原理:行動による害(例えば誰かが死ぬような出来事)は行動しなかったことによる危害よりも、非道徳的だと判断される
意図の原理:意図を持ってとった行動は、意図を持たずにとった行動よりも非道徳的だと判断される
接触の原理:肉体的な接触を伴う危害は、肉体的な接触のない危害よりも非道徳的だと判断される
心理学者ジョン・ダーレーによれば、大学生の被験者は刑罰の抑止力を考慮するよりもその犯罪にふさわしいと思われる刑罰を望んだ。刑罰の抑止力を考慮するよう注意された後でも、やはり「因果応報」である処罰を望んだ。「罰が課されない限り、社会と被害者は正義が執行されなかったという感覚を持ち続ける」。彼は『なぜ罰するのか?:罰の動機としての抑止力と因果応報』と題された論文で、処罰の欲求は犯罪抑止力に関する要因(例えば犯罪の露見可能性や社会的影響)とは関連が薄く、人々はより単純に罪の重大さランク付けし、もっとも深刻な犯罪にはその社会でもっとも重い罰(例えば追放、終身刑、死刑、拷問を伴う死刑)を与えなければならないと考えるのだと結論した。