日本では、200年余り続いた江戸の太平の世の中では、外国のどこかへ行って物を取ってこよう、外国のどこかが日本に来て何かを持って行ってしまうかもしれない、という発想・実感はなかった。ところが大航海時代以降世界に進出、支配領域を拡大した欧州、続く帝国主義の波に乗った米国によるアフリカ・アジア進出・侵略・植民地化は、東アジア各国にとっても脅威となった。 アメリカ合衆国の東インド艦隊司令長官ペリーが来航した時には「泰平の眠りを覚ます上喜撰(蒸気船)、たった四杯で夜も眠れず」という狂歌が読まれた。ちなみに<上喜撰>とは当時の玉露茶の商品名。濃いお茶であったため、たった四隻(杯)の外国蒸気船で国中が蜂の巣をつついたような騒ぎとなり夜も眠れないでいる…と揶揄している訳である。
中国南部では清国がイギリスと戦争(アヘン戦争)となり香港島を奪われ、日本でも北海道でゴローウニン事件、九州でフェートン号事件といった例などの摩擦が起こり始めた。これに対応するためには、「開国」して外来者を受け入れ自らも外へ出て行くか、外来者を追い払って(これまでの)平和を維持するかのどちらかであるが、「攘夷」は後者の発想・考え方。また、国内では国学の普及にともなって民族意識がとみに高まった時代でもあった。ことは複雑で事態は単純ではないが、大きな流れとしては、江戸幕末では「開国」を主張する薩摩藩と、「攘夷」を主張する長州藩の対立となった。ところが、欧米列国の圧力により修好通商条約に天皇が勅許を出した(1865年)ことにより「尊王」と「攘夷」は結びつかなくなった。また、津和野藩の大国隆正らによって、欧米列強の圧力を排するためには一時的に外国と開国してでも国内統一や富国強兵を優先すべきだとする大攘夷論が唱えられた事は、「開国」と「攘夷」という相反する対外思想が「討幕」論という1つの国内思想へと収斂される可能性を生んだ。土佐藩の坂本龍馬らの斡旋・仲介・手助けもあって、幕末日本の二大勢力は討幕へと向かっていくことになる。
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